Vol.10 名作家チームから訃報相次ぐ...
数多くのヒット曲を生み出した名作家チームからの訃報が相次ぎました。
ひと組は、ベン・E・キングやジョン・レノンが歌った『スタンド・バイ・ミー』やエルヴィスの歌った『監獄ロック』、同じ名ソング・ライティング・チーム:バリー・マン/シンシア・ワイルと共作した『オン・ブロードウエイ』などで知られる作家チーム:リーバー&ストーラーのジェリー・リーバー、もう一組は、マーヴィン・ゲイがタミー・テレルとのデュエットで、また、ダイアナ・ロスがソロ・アーティストとしてヒットさせた『エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ』や、チャカ・カーンでヒットした『(アイム)エヴリ・ウーマン』(プロデュースはアリフ・マーディン!)などで知られる夫婦作家チームであり、アーティスト/デュオとしても活躍したアシュフォード&シンプソンのニック・アシュフォード…
いずれも、ポピュラー音楽史上燦然と輝く素晴しい作品=”心を動かす”楽曲を残した名ソング・ライティング・チームですが、ここでは今まで語られる機会が少なかったアシュフォード&シンプソンについて触れてみましょう。
ダンサー志望のニック(ニコラス)・アシュフォードと音楽校生だったヴァレリー・シンプソン、二人は1964年NYの教会で出逢います。
ソング・ライティング・チームとしての始動は、ニックとヴァレリーに、アイク&ティナ・ターナーのバック・コーラス隊:アイケッツの元メンバーを加えた3人組として。
セプター・レコードと契約した3人、幾つかの小ヒットを経て、レイ・チャールズに提供した♪レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド♪がビルボードR&Bチャート1位(Hot100では31位)をスコア、この大ヒットに目をつけたのがモータウン社長:ベリー・ゴーディ。ニックとヴァレリーは作家契約を結び、当時アフロ・アメリカンなら誰しもが憧れたモータウン入りします。
ゴーディは、ニックとヴァレリーにマーヴィン・ゲイとタミー・テレルとのデュエット・ソングを書かせ、♪ユア・プレシャス・ラヴ♪、♪エイント・ナッシング・ライク・ア・リアル・シング♪、♪ユー・アー・オール・アイ・ニード・トゥー・ゲット・バイ♪、そして♪エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ♪など、男女ソング・ライティング・チームだからこそ醸し出せるようなロマンティックなタッチで、まさに当時モータウンが掲げたキャッチ・フレーズ=”サウンド・オブ・ヤング・アメリカ”を体現するかのようなエネルギーに満ち満ちた楽曲を次々とヒットさせます。
モータウン古参の先輩ソング・ライティング・チーム:ホーランド=ドジャー=ホーランドらと並び立ち、ソングライターとして黄金時代を迎えた彼らに、ゴーディはシュプリームスを脱退しソロ・アーティストとして再出発するダイアナ・ロスの1stアルバムのプロデュース/楽曲制作を任せ、♪リーチ・アウト・アンド・タッチ(サムバディーズ・ハンド)♪、そしてマーヴィン/タミーのカヴァー:♪エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ♪(Hot100:1位!)を期待通りに大ヒットさせます。
モータウンきっての大スター:ダイアナ・ロスのソロ・キャリア・スタート、そのプロデュースといえば、モータウンの浮沈を担うような大仕事…ゴーディの期待を超える成功に導いたニックとヴァレリーの功績は、輝かしいモータウンの歴史においても非常に大きいといえましょう。
一方、アーティスト/デュオとしては、'85年に♪ソリッド♪がヒット、Hot100で12位を記録しています。
今回のニック・アシュフォード、そして、ジェリー・リーバーの訃報を受け、ビルボード誌が興味深いデータを掲載していました。
ジェリー・リーバーがマイク・ストーラーと書いた♪スタンド・バイ・ミー♪は、'61年にベン・E・キングが、そして'07年にはショーン・キングストンが♪ビューティフル・ガールズ♪で…その間じつに46年!、そして、ニック・アシュフォードがヴァレリー・シンプソンと書いた♪エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ♪は、'67年にマーヴィン・ゲイとタミー・テレルが、そして'07年には先ごろ亡くなったエイミー・ワインハウスがシングル 『ティアーズ・ドライ・オン・ゼア・オウン』としてリリース…その間40年!と、半世紀に届かんばかりの長い時を経て再び世に出て、尚且つヒットを記録しています。
ショーン・キングストンの、そしてエイミー・ワインハウスの楽曲は双方ともに原曲をそのままカヴァーしたというものではなく、サンプリングという限定的な使用形態ながら、素晴しい楽曲、そして心を動かす音楽は、このように時を超え/愛され/継がれていく、そんなことをこのデータは証明してくれていますね。
尚、この2組、いずれもソングライター・ホール・オブ・フェイム(ソングライターの殿堂)入りしています(リーバー&ストーラー:'85年、アシュフォード&シンプソン:'02年)。
合掌。
リリース情報
AL「MOTOWN 50 The Best Of Motown ジャパン・エディション」
(UICY1434、¥3,800)
レーベル設立50年を記念してリリースされたコンピレーションAL。
アシュフォード&シンプソン楽曲『エイント・ナッシング・ライク・ア・リアル・シング』『エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ』など、大ヒット・チューン満載!
AL「バック・トゥ・ブラック~デラックス・エディション」
(UICI-1066、¥2,800)
名曲『リハブ』、そしてアシュフォード&シンプソン作『エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ』をサンプリング(カヴァー)した『ティアーズ・ドライ・オン・ゼア・オウン』収録!21世紀の大傑作と賞されたエイミーの2ndアルバムにして、遺作(2011年8月現在)。
AL「Stand By Me:Ben E King/Drifters」(輸入盤)
ドリフターズと、ドリフターズから独立後のベン・E・キングのヒット曲を網羅したレアなベスト・アルバム!
『オン・ブロードウエイ』『ラストダンスは私に』『アンダー・ザ・ボード・ウォーク』『スパニッシュ・ハーレム』そして『スタンド・バイ・ミー』などが一枚に!
リーバー&ストーラー楽曲多数収録!