Vol.11 バーブラ・ストライサンドが名唱!『風のささやき』】
創立45周年を機に私共フジパシフィックが掲げたテーマ:「心を動かす音楽を」…このキャッチ・フレーズをカタチにしたような出来事がありました。
'11年8月28日ロサンゼルスで行われたMTVヴィデオ・ミュージック・アワードでのこと。
レディー・ガガ、ブリトニー・スピアーズ、ビヨンセといったセレブたちがここぞとばかりに絢爛豪華な衣装を競い、派手なパフォーマンスを披露したのですが、会場のオーディエンス、そしてテレビの視聴者を魅了したのは、煌びやかな演出を一切排してピアノ伴奏のみで切々と失恋の歌「Someone Like You」を歌ったアデルだったのです。
アーティストにとって何より大切なのは音楽そのもの、そして歌唱力であることを全米の音楽ファンに証明したのです。
オン・エアーの翌週、この曲が前週19位から驚異的なジャンプアップを遂げ、再び全米NO.1になったことは言うまでもありません。
まさに、その曲で、その歌唱力で、多くの人々の心を動かした結果、成し得たウルトラCと言えましょう。
さて、同じ歌唱力という点で、現役世界一と言えるのがバーブラ・ストライサンド。
来年には歌手生活50周年を迎える彼女が2年ぶりにリリースしたアルバム『ホワット・マターズ・モスト~バーブラ・ストライサンド・シングス・アラン&マリリン・バーグマン』は、彼女の兄弟とも言える親友の作詞家コンビ:アラン&マリリン・バーグマン夫妻のペン(詞)による楽曲を集めたソング・ブック。
今回はその中からご存知ミシェル・ルグランとのコンビによる名曲「風のささやき~The Windmills of Your Mind~」をピック・アップしました。
スティーヴ・マックイーンとフェイ・ダナウェイ主演の映画『華麗なる賭け』主題歌として、ノエル・ハリソンが歌い'68年のアカデミー主題歌賞を獲得したこの曲は、アラン&マリリン・バーグマン夫妻とルグランとの初仕事でもありました。
"超"がつくほど有名な曲ですが、これまでバーブラがレコーディングしていなかったのは、この曲がブロードウェイ・ミュージカルをベースに歌い上げるイメージのバーブラに似合わなかったからでしょう…
リチャード・ロジャース&オスカー・ハマインII世を頂点としたブロードウェイ・ミュージカルは'50年~'60年には衰退し、ロック以外の作曲家の仕事も映画音楽がメインとなります。 舞台とは違い、より細かい心理描写が描かれる映画に求められる音楽は、典型的なティン・パン・アレー型ラヴ・ソングから、より深くかつナイーブなものに変わってゆきました。
この時代を代表する作曲家:バート・バカラックやアントニオ・カルロス・ジョビンにも同じことがいえますが、この頃から印象派(ラヴェルやドビッシー)的な曲作りが流行りだします。
「風のささやき」で聴ける、曲の終わりがそのまま曲の始まりになって行くスタイルは「シェルブールの雨傘」同様、ルグランが最も得意とするもので、バーグマン夫妻もその曲調に合わせ「万物は終わりの無い螺旋のように回り続ける~気がつくと夏がおわり秋が…」という内容の印象的な詞を付けたのです。
映画の主人公の不安定な気持ちを表現してほしいという監督の要望で出来あがった曲なのですが、あまりに美しいそのメロディーが世界的なヒット曲に仕立てたのです。
バーブラは、バーグマン夫妻の詞を一フレーズごと感情を込めて歌っています。
これまでのバーブラの"歌い上げる"イメージとは異なった趣を発見できます。
一言、"名唱"といえましょう。
お聴き逃しなく!
リリース情報
AL「ホワット・マターズ・モスト~バーブラ・ストライサンド・シングス・アラン&マリリン・バーグマン」
(SICP-3280/1、\3,780)
アメリカン・ショウ・ビジネスを代表する歌手:バーブラ2年ぶりとなるアルバム。
『ナイスン・イージー』や『』追憶』など、アラン&マリリン・バーグマン夫妻の手によるエヴァーグリーン・ソングスをコンパイルしたソング・ブック!
AL「21」
(BGJ-10107、\2,490)
全米、全英で空前絶後の大ヒットを記録中、今世紀最高の名盤と激賞される2ndアルバム『Someone Like You』、そして『Rolling In The Deep』収録!