Vol.16 アデルやエイミーも憧れた!"クイーン・オブ・キャデラック・レコード"エタ・ジェイムス逝去!
このコーナーでもたびたびご紹介いたしました映画『キャデラック・レコード』。
ブルース/ロックの生成/隆盛に大きな役割を果たしたシカゴのレコード会社)チェス・レコードを舞台にしたこの映画で、ビヨンセが見事に演じた女性ヴォーカリスト/アーティスト、それがエタ・ジェイムスです。
父親知れず…そんな不幸な家庭環境で育ったエタですが、早くからヴォーカリストとしての才能が開花し、14歳でプロ・デビュー、クレオレッツというガールズ・グループで活動していたところ、アーティスト/ソングライター/プロデューサー/DJなど当時八面六臂の活躍をしていたジョニー・オーティスに見出され、グループ名(クレオレッツ→ピーチズ)やステージ名(本名:ジェメセッタ・ホーキンス→エタ・ジェイムス)の変更や、レコード会社との契約(Modern Records)など、ジョニーの包括的プロデュースの元、SG『Dance With Me, Henry』(オーティスとエタの共作)が大ヒット、リトル・リチャードのツアーのオープニング・アクトに抜擢されるなど順風満帆でキャリアをスタートさせます。
私生活でもB.B.キングとステディな仲になり(B.B.の『Sweet Littlle Sixteen』はエタに向けて作られた曲と云われています)マスメディアを騒がせるなど、スター街道をひた走るエタが、Modern Recordsとの契約を終了させて移籍したのがArgo records、そう、キャデラック・レコード=チェス・レコードのサブ・レーヴェルでした。
移籍後のエタは、これぞエタ!な代表曲『At Last』、ロッド・スチュワートなどがカヴァーした『I'd Rather Go Blind』などの大ヒットを連発、レーヴェル・ヘッドであるレナード・チェスの思惑通り、当時、間口の狭いジャンルとされていたブルース/R&B畑を超越し、ポップ・チャートでもよいチャート・アクションを記録するクロス・オーヴァー・アーティストとして成功、同レーベルきってのフィメール・アーティスト、"クイーン・オブ・チェス=キャデラック・レコード"としてチェス・レコードを支え、'93年にはロックの殿堂入り、'03年にはハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにその名が刻まれ、6回に渡りグラミーを受賞などなど輝かしい功績を誇ったエタが、今年1月20日、74歳の誕生日目前で逝去しました。
そんな彼女の影響を高らかに公言しているのが、そう、今をときめくアデルです。
エタを聴いてシンガーを夢見、エタとの競演を願ってやまなかったアデル(一度は予定されるものの、エタの病気で流れた過去も)…そんなアデルが自身のコンサートで必ず歌うのが『フール・ザット・アイ・アム』。
アデルとエタ、若くしてキャリアをスタート(アデルは19歳)したことや、その風体(ともに恰幅がよい)など、共通点が多く見受けられますね。。。
また、アデルの他にも前出のビヨンセをはじめ、古くはジャニス・ジョプリン、ローリング・ストーンズ(ミック・ジャガー)、ダイアナ・ロス、ロッド・スチュワート、ボニー・レイットから、新しいところでは、クリスティーナ・アギレラ(先ごろ執り行われたエタのフェアウエル・セレモニーで"At Last"を熱唱)、ジョス・ストーン、そしてエイミー・ワインハウスに至る錚々たるアーティスト/シンガーが、エタ(のヴォーカル・スタイル)からの影響を公言しています。
エタがヒットを連発していた'60年代から既に50年、半世紀が経過しています…にもかかわらず、いまだに若い世代にアピールし、影響を与え、後進のアイドル足り続けるエタ・ジェイムス、彼女の歌、そして楽曲…心を動かす音楽とはかくあるべし、ですね。
合掌。
リリース情報
エタ・ジェイムス『ハー・ベスト』(2010/1/27リリース、UICY-1462、¥2,300)
エタのキャリアを総括したベストAL。『アット・ラスト』等大ヒット満載!