Vol.39 洗練された革命的アーティスト:ルー・リードが歩んだロック・シーンのワイルド・サイド

10月27日、ルー・リードが亡くなりました。
 
キャリア50年をゆうに超えるルー、齢70超ながら、亡くなる少し前に撮影された近影はとても喜寿を過ぎたそれとは思えないほどクールな佇まいで、それはそれは若々しくカッコいいものでした。
 
生まれはニューヨーク・ブルックリン、そう生粋のシティ・スリッカー:ルー・リード。彼を語るうえで、欠かすことのできないのは、出生地であり一貫して活動の拠点としたニューヨークの存在。
ニューヨークで生まれ、音楽家として活動したルー・リードが、様々なジャンルの最先端を走る芸術家=アーティスト…“ポップ・アート”のアンディー・ウォーホル、『ティファニーで朝食を』を書いた作家:トルーマン・カポーティーらと盛んに交流するようになったのは必然。
洗練されたニューヨークの芸術家たちと呼び合うように巡りあい、付き合いを重ねてきたことが、“アート=芸術”としてロックを追及するルー・リードの素地を作った、といえましょう。

前衛的で革新的な芸術家たちとのケミストリーは、ボブ・ディランらと並び“史上最高のロック詩人”と賞されるほど文学性に富んだ歌詞に、プロデュースも務めた (アンディ)ウオーホルがジャケット・アートを手掛けたヴェルヴェッツ(ヴェルヴェッド・アンダーグラウンド)の1stアルバムでポピュラー音楽のアルバム・ジャケット史に燦然と輝く金字塔的に昇華しました。

ルー・リードが、かくもインテリジェンスに富み、スタイリッシュでアーティスティックな雰囲気を生涯醸し出し続けた所以は、ニューヨークという街に生まれ、ニューヨークで活動してきた、という点にあることは明白でしょう。

一方で、ルー・リードは、上に述べた“音楽と芸術の融合”の他にも、誰もやったこのとない音楽的実験を繰り返してきました。
 
昨今のラウド・ミュージック・シーンを予見したかのようなノイジーでアバンギャルドなアルバム『メタル・マシーン・ミュージック』 (’75)や、ハイレゾナンス・オーディオ時代を見越したかのような高音質作品『エクスタシー』(‘00)、まさか!のメタリカとの共演作『LULU』など、話題・問題・革命的作品をそのキャリアを通じて世に出し続けました。
ルー・リードが道を拓かなければ、’90年代にオルタナティブやグランジといった音楽ジャンルも、レディ・ガガの最新アルバム『アートポップ』も生まれなかったかもしれません。
 
まさに自身最大のヒット曲『ワイルド・サイドを歩け〜Walk On The Wild Side』を体現するかのように、キャリアを通じ誰も踏み入れたこのない未開の地を切り拓き、歩き続けるような音楽活動を貫き続けたルー・リード。
こんなにカッコよく、ハイセンスな、“ロック・アーティスト”、そうはいないでしょう。
 
ルー・リード、合掌です。
 

リリース情報

☆【プレイリスト:ヴェリー・ベスト・オブ・ルー・リード】(SICP-3648, ¥1,300, 2012/8/8リリース)
名曲「ワイルド・サイドを歩け」、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代の代表曲「スイート・ジェーン」など、ルー・リードの魅力が詰まったベスト盤!