Vol.57 大好きな曲

【 “心に秘めていた大好きな曲”を歌い、自身をさらけ出すアーティスト!】 
 
誰も皆、心の支えとなってきた特別な曲を持っているでしょう。
理由は皆それぞれでしょうけれど、一番大切な曲。
それを人はあまり他人に吐露しない、なぜなら心を見透かされる気がするから。プロのアーティストの場合はどうなのでしょう?
例えば、パンク・ロッカーはパンク以外の曲を認めないのでしょうか?
自分のキャリアやイメージに見合ったジャンルの曲を“大切な曲”なんて云うと、ファンが離れていく?。。。
 
そんな疑問に対する回答を示すような作品を、エスタブリッシュド・アーティスト=年齢とキャリアを確立したアーティストが、続々とリリースしています。
ヴェテラン・アーティストが、心に秘めていた自身にとって大切な曲を歌った作品…いわば、ひた隠しにしていた自分の心の内をひけらかすような作品をリリースするということは、ともすればファン離れを起こしかねない、超チャレンジ作品といえましょう。
だからこそ、作り手=アーティストは、それはそれは真剣かつ丁寧に作品を作ります。
よって当然ながら聴きごたえのある良作が多い!
今回の当コラムではそんな作品をご紹介します。
 
●ボブ・ディラン 『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』、
『テンペスト』以来3年ぶり、通算36作目の新作は、なんと全て一発録音のカヴァー・アルバム。
収録された10曲は、なんとフランク・シナトラが歌った名曲たち。
シナトラは今年生誕100周年を迎えますが、そのようなインフォメーションには一切触れず(ディランらしい!)、ディランは次のように語っています。
「これらの曲はカヴァーされ過ぎたため、その本質が埋もれてしまった。私がやっているのはそのカバーを外す作業だ。本質を墓場から掘り起こして、陽の光をあてたのだ」。
ディランの言う“本質”こそ、彼の”心の歌”という意味なのでしょう。
ディランがティーン・エイジャーだった1950年代はまさにシナトラの全盛期、アルバムの1曲目を飾る
”I'm A Fool To Want You"が発表されたのは1951年、時にディラン10歳、多感な天才の目覚めはすぐそこ、という感じだったのではないでしょうか?
 
●ダイアナ・クラール  『ウォールフラワー』
ジャズ・ヴォーカル&ピアノの女王:ダイアナがデイヴィッド・フォスターと組んで発表した新作は、なんと’70年代ロックの名曲をカヴァーした、美しくもセンシティヴなアルバム。
イーグルスの「ならずもの〜デスペラード」、レオン・ラッセルの「スーパースター」、ジム・クロウチの
「オペレーター」など、ダイアナが選んだ曲は全て、心の琴線に触れる詞曲で’70年代ロックを築いたロック・クラシックス。
ダイアナは現在50歳なので、彼女が5,6歳の頃からティーン・エイジャーに至るまで、ラジオやレコードで何度も聴き、涙した曲たちが選ばれています。
多感な時期に彼女の心を癒した“特別な”歌たちを、ダイアナは心をこめて歌っています。
 
●ベット・ミドラー 『イッツ・ザ・ガール』
ベット・ミドラーの新作は’60年代を中心にしたガール・グループのヒット曲集。ジャニス・ジョプリンをモデルにした’79年の映画『ローズ』のヒットにより個性派女優の印象が強い彼女ですが、歌手としては正統派のポピュラー・シンガー。
‘45年ハワイ生まれで、舞台女優をめざしブロードウェイへ。
ミュージカル女優の映画主題歌ヒットといえばジュリー・アンドリュースや今日のイディナ・メンゼルに近い存在だったのかもしれません。
ティーン・エイジャー真っ只中の’60年代ヒット・チューン「ビー・マイ・ベイビー〜あたしのベビー」
「ワン・ファイン・デイ」「テル・ヒム」などの懐かしいガール・ポップを楽しそうに唄う彼女に、ただただ“歌”が好きな少女を感じざるを得ません。

 

リリース情報

 ボブ・ディラン『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』(SICP-4391、2/4リリース)“(埋もれてしまった)本質を墓場から掘り起こして、陽の光を当てたのさ”…ディラン節全開!メロディーに乗せて普通に歌うディランがそこに!


 ダイアナ・クラール『ウォールフラワー』
(初回盤SHM+DVD:UCCV-9577/通常盤:UCCV-1150、絶賛発売中!)ジャンルを超えたクロス・オーヴァー・ヒットを放ち続けるジャズ・ヴォーカルの女王:ダイアナ・クラールが、マエストロ:デヴィッド・フォスターとタッグを組んだ珠玉のカヴァー集!

 ベッド・ミドラー『イッツ・ザ・ガールズ』(WPCR-16190、絶賛発売中!)ロネッツ、エキサイターズ、シュプリームスからTLCまで、ガールズ・グループの大ヒット・ナンバーをカヴァーした、ベッド・ミドラー入魂の最新作!