Vol.9 ♪リハブ♪~その歌声だけで人々を感動させてしまうエイミー・ワインハウスの魅力とは...
レディー・ガガをして、48時間言葉を失わせたエイミー・ワインハウスの突然の死…
以来、アルバム『バック・トゥ・ブラック』は全英でNo.1に返り咲き、なんと165週チャート・イン。
全米チャートでは4位に再上昇、1週間に11万ダウンロード(タイトル)が記録されるなど、今、改めてエイミーの歌が注目されています。
内面的な心情を切々に歌に託すアデルに対して、エイミーは赤裸々に心情を伝えるハードコアのシンガー・ソングライター。
スタイルは違えども、この2人が英米でベスト・セラーを続けている理由は、デジタリーに商業化されていく昨今の音楽界に対する反動とも言えましょう。
エイミー・ワインハウスは、タクシー運転手の父と薬剤師の母の間に1983年9月、イギリスはエンフィールドに生まれました。
彼女自身はロネッツやシャングリラスなどの'60年代ガールズ・グループやモータウン・サウンドに憧れていたのですが、十代の彼女に唄の才能を見出した父親は、彼女にダイナ・ワシントンやビリー・ホリデイらのジャズ・ヴォーカルを聴かせ、また母親がジャニス・ジョプリン、キャロル・キング、ジェイムス・テイラーなどを好んで聴いていたという家庭環境が、彼女の幅広い音楽性を作り上げたといえるでしょう。
「リハブ」をはじめ、エイミーの音楽が人々を感動させる一番のポイントは、ビリーやダイナと同じように、耳にしたとたんに”それと判る天賦の声”。
そしてその歌力(うたぢから)です。
さらにジャニスやキャロルやジェイムスを凌ぐ私的な詞のパワー、そしてダンサブルな'60年代のサウンドとメロディーラインがプラスされ唯一無二のエイミーの音楽が出来上がります。
つまりエイミーの音楽には'40年代から'70年代に至る、ポピュラー音楽が最も輝いていたそれぞれの時代のエッセンスが、現代の音に凝縮されているのです。
'07年に結婚した夫:ブレイク・フィールダー・シビルの影響で薬物とアルコールの依存症になったエイミー、何度もリハビリ施設に入退院を繰り返しましたが、生涯アルコールを断ち切ることが出来ませんでした…。
”皆がリハビリに行けというけど、まっぴらごめん”と強がる言葉の奥に深い悲しみが見えてくるこの名曲「リハブ」はまさに彼女の人生…。
ちなみにダイナ・ワシントン、ビリー・ホリデイもまた、麻薬とアルコールの過剰摂取で亡くなっています。
P.S.
長らくアルコール依存生活から脱却できなかったエイミーが、シーン最前線本格的復帰への足がかりとして、クインシー・ジョーンズのトリビュート・アルバム【Q:Soul Bossa Nostra】(2010年11月リリース)では、レスリー・ゴーアの「It's My Party」を、この10月にリリースが予定されているトニー・ベネットの『デュエッツII』では、ビリー・ホリデイの十八番であった「Body And Soul」を歌っています。
リリース情報
AL「バック・トゥ・ブラック~デラックス・エディション」(UICI-1066、¥2,800)
『リハブ』収録!全米大ブレイク、グラミーで猛威を振るい、21世紀の大傑作と称されたエイミーの2ndアルバム。
AL「フランク~デラックス・エディション」(UICI-1073、¥2,800)
1stアルバムに、シングル・カップリング曲”ラウンド・ミッドナイト”のカヴァーやデモ音源を多数収録した2枚組。