Vol.26 『2007年結成30周年を迎えるポリス、なんと再結成!』

今年2007年に結成30周年のアニヴァーサリー・イヤーを迎えるザ・ポリス。ドキュメンタリー映画の公開や紙ジャケ・シリーズのリリースなどのニュースでファン・マスコミが俄かにざわつき始めたところ、ド級のサプライズが!なんとグラミー賞受賞式での復活パフォーマンスが決定!また、一部報道では大規模な再結成ツアーも企画されており既にリハーサルもスタートしたとか…。”史上最強のトライアングル“と賞されたザ・ポリスの再結成、2007年ミュージック・シーンのビッグ・ニュースのひとつになることは間違いありませんね。
ということで、今回のThe Seasoning of Songsはザ・ポリスの楽曲を特集してご紹介いたします。

ザ・ポリスは’77年に結成、結成後すぐにアンディー・サマーズが加入し一時期4人編成となりますが、ほどなくしてギタリストが脱退、スティング(vo,b)/スチュワート・コープランド(ds)/アンディー・サマーズ(g)という史上最強と謳われたロック・トライアングルが誕生します。翌’78年 にはA&Mレコーズと契約、同年アルバム『アウトランドス・ダムール』でデビュー。レゲエのリズムにパンクのエッセンスをプラスしたそのサウンドに、スティングの手によるキャッチーなメロディーが乗るワン・アンド・オンリーなポリス・ミュージックは瞬く間にシンパを増やし、デビュー直後に英国でブレイクを果たします。’80年にはアルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ』からカットされたシングル『ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ』『高校教師』がいずれもビルボード・シングル・チャート・トップ10入りしアメリカでもブレイク、ワールド・ワイドなビッグ・アーティストにジャンプ・アップします。続いて’81年にはアルバム『ゴースト・イン・ザ・マシーン』がビルボード・アルバム・チャートNo.2、リード・シングル『マジック』が同シングル・チャートNo.3をそれぞれ記録、その人気を不動のものに。そして’83年、通算5枚目にしてラスト、そしてポリス史上最大のヒット・アルバムとなる『シンクロニシティー』をリリース、シングル『Every Breath You Take~見つめていたい~』も大ヒットを記録、絶頂期を迎えますが、’84年に活動を停止。ポリスとしての活動期間は7年と短く、且つ、リリースされたオリジナル・アルバムはわずが5枚と少ないながらも、ロック・ファンのみならず“ジャズ・ファンにも認められる唯一のロック・バンド”の称号よろしく、あらゆるジャンルのファンに訴求するそのサウンド、そしてスティングが綴る哲学的・観念的な詞は後の音楽シーンに大きな影響を与えます。そして今年、活動停止から20有余年を経て、期間限定ながら待望の活動再開を果たすポリス。その一発目となるグラミー賞でのパフォーマンス、とても楽しみですね。
それではフジパシフィックのカタログのなかからザ・ポリスの楽曲を数曲ピックアップしてご紹介いたします。

 

Roxanne~ロクサーヌ~(1978)

デビュー・アルバム『アウトランドス・ダムール』からの3rdシングル、英国で初のトップ20ヒットを記録しポリスは本国英国でブレイクを果たします。この曲のタイトルを、スティングはエドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』の登場人物で絶世の美女:ロクサーヌからとっています。スティングの文芸への造詣の深さが窺えますね。また、この曲はその曲調からブラック・マーケットにもアピール、アメリカでもクロス・オーヴァー・ヒットとなっています。映画『48時間』で当時バリバリのブラック・アイコンだったエディー・マーフィーが鉄格子の中でこの曲をウォークマンで聴きながらスティングの声真似をして歌うシーンは、この曲のブラック・マーケットへの訴求力をズバリ現していますね。

★「Roxanne~ロクサーヌ~」は、『アウトランドス・ダムール』(UICY-6575)に収録されています。

 


Message In A Bottle~孤独のメッセージ~(1979)

2ndアルバム『白いレガッタ』からのリード・シングル『孤独のメッセージ』、この曲でポリスは初の全英No.1を獲得します。無人島に漂流した男が味わう失望と孤独に失恋後の空虚感を重ねて歌われたこの曲をスティングはとても気に入っているようで、ソロになってからもライヴなどで必ずプレイしています。なお、2ndアルバム『白いレガッタ』に収録されている『So Lonely』のプロモーション・ビデオは東京の都営浅草線構内で撮影されています。また、3枚目のアルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ』からシングル・カットされた『ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ~De Do Do Do, De da da~』には湯川れい子さんが歌詞をつけた日本語バージョンも作られており、ポリスの日本びいき、日本での人気の高さが窺えます。

★「Message In A Bottle~孤独のメッセージ~」は、『白いレガッタ』(UICY-6576)に収録されています。

 

Don’t Stand So Close To Me~高校教師~(1980)

3rdアルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ』からのリード・シングルで、ポリス初の全米トップ10ヒット。自身教師経験のあるスティングが、若い男性教師が女生徒に抱くパラノイアについて表現したこの曲の歌詞、彼自身の実体験に基づいたものと捉えられがちですが、スティングは否定しています。なお、歌詞の一部には“ナボコフの小説で描かれた男のように…”とあり、スティングがウラジミール・ナボコフの『ロリータ』で描かれたセクシャル・パラノイアを下敷きにしてこの曲を書いたことが推測されます。また、活動停止後の’86年にリリースされたポリス初のベスト・アルバム『Every Breath You Take: The Singles』にはこの曲のセルフ・カヴァー・ヴァージョンが収録されています。

★「Don’t Stand So Close To Me~高校教師~」は、『ゼニヤッタ・モンダッタ』(UICY-6577)に収録されています。

 

Every Little Thing She Does Is Magic~マジック~(1981)

4thアルバム『ゴースト・イン・ザ・マシーン』のリード・シングル(英国のみリード・シングルは“インヴィジブル・サン”)、そして全米シングル・チャートでポリスが初めてトップ3を記録した曲です。’81年に発表されたこの曲、実は’76年にスティングの手によって制作され、’77年、ザ・ポリスの前身となるストロンチウム90名義でアコースティック・ヴァージョンがレコーディングされています。’97年には、この曲をはじめストロンチウム90名義で録音したデモ・トラックなどを集めたコレクターズ・アイテム:『ストロンチウム90~ポリス・アカデミー』がリリースされています。なお、この曲を収録した『ゴースト・イン・ザ・マシーン』でポリスはアルバム・チャートでも初の全米トップ3入りを果たします。また、このアルバムをプロデュースしたヒュー・パジャムとスティングとは、次作の『シンクロニシティー』はもちろん、ソロ・キャリアをスタートした後も長きに渡ってタッグを組んでいます。

★「Every Little Thing She Does Is Magic~マジック~」は、『レガッタ』(UICY-6578)に収録されています。

 


Tea In The Sahara~サハラ砂漠でお茶を~(1983)

小学校の国語(=英語)教師の肩書きを持つスティング。好きが高じて国語教師になったほどの文学フリーク:スティングの“らしい”一面が最もアピールされたのはこの曲:『サハラ砂漠でお茶を』といえましょう。この曲の下敷きとなったのは、バロウズやギンズバーグらとともにビートニック・エラの一翼を担ったポール・ボウルズの名著『シェルタリング・スカイ』。監督:ベルナルド・ベルトリッチ、出演:デブラ・ウインガー/ジョン・マルコビッチで’90年に映画化もされました。ちなみにキング・クリムゾンが’81年にリリースしたアルバム『ディシプリン』にもこの著書からインスパイアされた曲:その名も『THE SHELTERING SKY』が収録されています。
 

Every Breath You Take~見つめていたい~(1983)

ポリス特集、最後にご紹介する曲はやはりこの曲、『Every Breath You Take~見つめていたい~』です。’83年現状でのラスト・スタジオ・アルバムとなる『シンクロニシティー』からのリード・シングルで、この年全米年間シングル・チャートでも見事No.1をスコアしたポリスの代表曲。この曲に引っ張られ、アルバム『シンクロニシティー』はビルボード・アルバム・チャート17週連続No.1を記録、全米だけで800万枚を売り上げるモンスター・アルバムになりました。『シンクロニシティー』は当然ながらグラミー賞のアルバム・オブ・ジ・イヤーにノミネートされますが、この年リリースされたもう一枚のモンスター・アルバム:マイケル・ジャクソンの『スリラー』によって受賞を阻まれます。反対に、最優秀楽曲賞では、『見つめていたい』がマイケル・ジャクソンの『ビリー・ジーン』をおさえて見事受賞、この年を象徴する2大アーティストが主要部門を分け合いました。また、アルバム・タイトルを冠した“シンクロニシティー・ツアー”も大盛況、『見つめていたい』のPV同様ゴドレイ&クリーム(10CC)が監督したライヴ・ビデオも記録的な売り上げを記録しました。
なお、この曲をサンプリング(というよりほとんどカヴァー)したパフ・ダディ(ショーン“パフィー”コムズ)のノートリアスBIG追悼シングル:『I’ll Be Missing You』も’97年に11週連続シングル・チャートNo.1を記録、スティングの書いたこの素晴らしいメロディーが世代を問わず受け入れられることを証明しました。

★「Tea In The Sahara~サハラ砂漠でお茶を~」「Every Breath You Take~見つめていたい~」は、『シンクロニシティー』(UICY-6579)に収録されています。

 

※オープニングでのパフォーマンスが決定したグラミー賞授賞式は2/11(日)ロスアンジェルスのステイプルセンターにて行われます。
また、ポリスの活動を追ったドキュメンタリー映画【ポリス インサイド・アウト】は3/31よりTOHOシネマズ六本木ヒルズにて公開されます。