Vol.4 4月という月は、歌になりやすいのか?

桜の花も例年に較べ2週間ほど早く咲き始め、“まさに春到来"。
ということで、今月は真っ盛りの春にちなみ、尚且つ4月に拘ったコンセプトでセレクションした楽曲情報をお届け致します。

4月という月は、歌になりやすいのか?
パット・ブーンの1957年のNo.1ヒット「4月の恋」(April Love)から、ジャズ・スタンダード「4月の想い出」 (I'll Remmber April)、バーノン・デュークとE・Y・ハーバードによる大スタンダード・ナンバー「エイプリル・イン・パリ」 (April In Paris)、バーデン・パウエルの「4月のバラ」、はたまた、ディズニーものでは映画『バンビ』に使用された「4月の雨」 (Little April Shower)…等など、4月をテーマにした楽曲は沢山あります。
欧米ではイースターの季節とあって心もうきうき、そうアービング・バーリンの「イースター・パレード」(Easter Parade)なんて曲も4月の歌と言えるでしょう。

それではフジパシフィック音楽出版のカタログから数曲ご紹介しましょう。

リリース情報

「4月になれば彼女は」- April Come She Will -
(Paul Simon):サイモンとガーファンクル

“歴史的名盤"との呼び声高い1965年発表のセカンド・アルバム「サウンド・オブ・サレンス」に収められた、2分弱と短いながら美しい楽曲。ポールは童謡としているだけあって、まさにこれは詩。ライミングや倒置法が見事に用いられている。“4月に彼女は来る…8月に彼女は死んで…9月、かっての新しい恋は熟れ老いる"と歌った名曲。
この楽曲は「サウンド・オブ・サイレンス/サイモンとガーファンクル」(MHCP-2063)に収録されています。


「4月の協奏曲」(Ritchie Blackmore / Jon Loard):ディープ・パープル

1968年、リッチー・ブラックモア(G)、ジョン・ロード(Key)、イアン・ペイス(Ds)、ロッド・エヴァンス(Vo)でスタートした第一期ディープ・パープル(同年「ハッシュ」が全米4位を記録するヒット)のラスト・アルバム「III」(1969年)に収められています。
このアルバムで、彼等はストリングスを多用するなど当時の新しい流れであったプログレッシヴ・ロックの要素を取り入れている。
この楽曲は「III/ディープ・パープル」(VPCK-85322) に収録されています。

「エイプリル・フールズ」- April Fools-
(Rufus Wainwright):ルーファス・ウェインライト

ケイト・マクギャリグルとラウドン・ウェインライト・世(70年代に活躍したシンガー・ソング・ライター)の間に生まれた偉才シンガー・ソング・ライター“ルーファス"が、ヴァン・ダイク・パークスも参加して話題をまいた98年のデビューアルバム「ルーファス・ウェインライト」に吹き込んだ曲。その優しさの中に繊細さをそなえた声とポップスとクラシックを融合したサウンドに感動さえ覚える。
この曲は「ルーファス・ウェインライト/ルーファス・ウェインライト」(MVCA-24010)に収録されています。

 「幸せはパリで」- The April Fools -
(Burt Bacharach / Hal David)

バカラックの手にかかった映画音楽は、映画と切り離しても楽しめますね。
これはスチュアート・ローゼンバーグ監督のアメリカ映画『幸せはパリで』(原題: The April Fools、1969年公開)…中年男のジャック・レモンがパーティーで知り合ったカトリーヌ・ドヌーブとの生活を夢見てパリへ、という内容のロマンティック・コメディー…で使われた楽曲。ディオンヌ・ワーウィックのバージョンもお勧めですが、ここではバカラックのバージョンを収録した映画音楽集をご紹介致します。
「バカラック・アット・ザ・ムーヴィーズ/BJトーマス,トム・ジョーンズ,メル・トーメ,ダスティー・スプリングフィールド他」(UICY-4084) 

 「エイプリル・ラヴ」- April Love -
(Earl Klugh / Jr. Wilbert)

アール・クルーは、54年デトロイト生まれで幼児期にはピアノも弾いていたようですが後ギターに専任、10代からジョージ・ベンソンらと共演、後にチック・コリアと結成したリターン・トゥー・フォエヴァーで現代ジャズギタリスト最高峰としてその地位を決定づけました。この曲は1995年のアルバム「ソーダ・ファウンテン・シャッフル」(WPCR-494)に収録されています。     

 

4月1日
レオン・ラッセル(1941~)

 70年代ロック界の才人-プレイヤー、ソングライター。
故・福田一郎先生は“リオン・ラッセル"と呼ばれてましたっけ。
ジョーコッカーと結成したマッド・ドッグス&イングリッシュメン、あるいはインディ・ロック・レーベル“シェルター"の創始者…と、彼についてはいまさら説明の必要はありませんね。エイプリル・フールの日が誕生日だったとは!

代表曲:
「Superstar」 (スーパースター)
レオンがデラニー&ボニーと共作した「ソング・フォー・ユー」と並ぶ代表作。「ソング・フォー・ユー」と同様、日本ではカーペンターズのヒットで有名になった曲。
「Superstar」は、「カーペンターズ/ゴールド(デラックス・サウンド&ヴィジョン)」(UICY-7230)に収録されています。

 

4月7日
ビリー・ホリデイ(1915~59)

 ビリー・ホリデイは天才的な歌手です。
ジャズの世界の人々は、レスター・ヤングやテディー・ウイルソン楽団の関係からビリー・ホリデイを所謂“ジャズ歌手"にカテゴライズしたがりますが、レコード会社は彼女をより大衆に向けて売リ出すべく、ジャズだけではなく当時の流行り歌を数多く歌わせています。
彼女特有のうねりに似たスィング感は所謂ジャズのそれとも一線を画しており、ポピュラー・ソングも総て彼女の歌にしているところに彼女の偉大さを感じます。

代表曲:
「Crazy He Calls Me」 (クレイジー・ヒー・コールズ・ミー)
お薦めは、あのサム・クックもビリーにトリビュートした、詞:カール・シグマン、曲:ボブ・ラッセルによる49年の作品「Crazy He Calls Me」。
ビリー・ホリデイは、同曲発表と同時にデッカのアルバム「ラヴァーマン」にレコーディングしています。
“キミがそうしてくれと言うのなら山でも動かすし、火でもくぐる、そんなボクをキミはCrazyというが…その通り、それほど恋に狂ってる…、という熱い内容の歌詞です。

「Crazy He Calls Me」は、「ビリー・ホリデイ/アンソロジー」(CRCL-8846)に収録されています。

 

4月11日
ライオネル・ハンプトン(1909~2002)

 ライオネル・ハンプトンは、ビブラフォンをジャズの楽器として成立させ、のちのミルト・ジャクソンらに伝えたジャズ界の偉人という側面もありますが、その卓越したテクニックと明るいキャラクターはプレイヤー=エンターテイナーとしても高く評価されています。
ベニー・グッドマンがそのトリオ(テディ・ウィルソンP、ジーン・クルーパーDS)に加え2人目の黒人メンバーとしてハンプトンを起用し今や伝説化されている無敵のスウィング・リズムを生み出しました。

代表曲:
「Stardust」 (スターダスト)
数多レコーディングされている「Stardust」の中でも、ハンプトンのバージョンは出色の出来とされています。 ヴォーカルとハモるスラム・スチュアートのベースも楽しいですが、ここでも聴けるハンプトンの長いアドリブがもとでこの曲がビブラフォン奏者の定番となるようになりました。
「Stardust」は、「ライオネル・ハンプトン/スターダスト」(UCCU-5038)に収録されています。   


 4月12日
ハービー・ハンコック(1940~)…

 イリノイ州シカゴ生まれ、11才でシカゴ交響楽団と共演し、天才と賞される。60年にドナルド・バードと初レコーディング後、60年代は主にマイルス・デイヴィスと活動、70年代に入って、フレディー・ハバード、トニー・ウリアムス、ロン・カーター、ウェイン・ショーターとあのV.S.O.P.を結成、のちのヘッド・ハンターズ礎となりました。
ハービーがレコーディングした作品の殆どは自作品ですが、ここでは数少ないカヴァー・アルバムを紹介します。

代表曲:
「Mercy Street」 (マーシー・ストリート)
ザ・ニュー・スタンダード・スペシャル・エディション/ハービー・ハンコック(POCJ-9091/2)は、サイモン&ガーファンクルの「スカボロ・フェア」、ニルヴァーナの「オール・アポロジーズ」などを収録したハービには珍しいカヴァー・アルバム。この曲は元ジェネシスのヴォーカリスト、ピーター・ガブリエルの楽曲のカヴァー。

 

4月14日
リッチー・ブラックモア(1945~)

 日本でトップの人気を誇るハードロック界のギタリストで、ご存知ディープ・パープルの大御所。「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」「BURN」等で聴ける、高速テクニックとヘヴィーなリフは当時感激ものでした。「BURN」はハード・ロック専門誌(つづりは違います)の誌名にも使用されてます。76年にグループを脱退、ディープ・パープルはいったん解散しましたが80年に再結成。

代表曲:
「Highway Star」(ハイウェイ・スター)
この曲に関しては、リッチーのギターは勿論、ジョン・ロードのキーボードをたたえる人も多い。その後レインボウによって完成されるドラマチックな様式美の原型がジョンとリッチーのプレイに見られます。
「Highway Star」は、「ヴェリー・ベスト・オブ・ディープ・パープル」(WPCR-10737)に収録されています。  
  


4月24日バーブラ・ストライザンド(1942~)

 1942年ニューヨーク:ブルックリンに生まれる。42年生まれ、というところが微妙で、エルビスやビートルズに次ぐレコード・セールスを誇りながら、音楽的なカテゴリーでは今日のポップスの流れでなくブロードウェイ・ミュージカル派と呼ばれる所以がそこにある。フェイバリット作曲家はハロルド・アーレンと公言している通り、曲、詞を大切にした“歌"が彼女の身上といえる。グラミー賞10回はもとより「ファニー・ガール」などでオスカーも2回受賞した女優でもあります。

代表曲:
「The Way We Were」(追憶)
ご存知1973年シドニー・ポラック監督、バーブラとロバート・レッドフォード主演のロマンス映画のために作られた、マービン・ハムリッシュ、アラン、マリリン・バーグマンによる同名の美しい主題歌。同年のアカデミー賞作曲賞及び楽曲賞を受賞しています。
「The Way We Were」は、「ジ・エッセンシャル・バーブラ・ストライサンド」(SICP-131)に収録されています。



 4月25日
エラ・フィッツ・ジェラルド(1918~96)

 サラ・ヴォーンと共にジャズ・ヴォーカルの女王と呼ばれるエラもビリー・ホリデイと同じく幼い頃はニューヨ-クでホームレスをするなど苦労をしていましたが、たまたまダンサーとして受けたアポロ・シアターのオーディションで"歌手"として認められ、12回のグラミーを受賞する道が開かれた。自由奔放なアドリブとスキャット唱歌法が彼女のトレードマーク。

代表曲:
「Lullaby Of Birdland」(バードランドの子守唄)
マンハッタンは52丁目に50年にオープンしたジャズ・クラブ(バードは当然チャ-リー・パーカーの意)“バードランド"に出演していた盲目のピアニスト:ジョージ・シアリングがその店のテーマ曲として作ったもの。
「lullaby Of Birdland」(バードランドの子守唄)は、「エラ・フィッツジェラルド/《ケン・バーンズ・ジャズ~20世紀のジャズの宝物》」(UCCV-4010)に収録されています。   

 

4月26日
フランシス・レイ(1932~)

  南フランスはニース生まれ。パリに出てエディット・ピアフ、イヴ・モンタン、グレコ達の伴奏をしていたが、ピエル・バルーとの出会いを契機に、あのクロード・ルルーシュとの映画音楽コンビが完成。以後、66年「男と女」、67年「パリのめぐり逢い」、68年「白い恋人達」と次々と名作を生み、ついに70年「ある愛の歌」でアカデミー作曲賞を獲得しています。

代表曲:
「Treize En France」(白い恋人達)
1968年のグルノーブル冬季オリンピックをドキュメントしたクロード・ルルーシュ監督同名作品のテーマ曲。オープニングの聖火リレーのシーンでこの曲が印象的に使用されています。
「Treize En France」(白い恋人達)は、「Man & A Woman (Master) : The Very Best Of Francis Lai」に収録されています。

 

4月29日
デューク・エリントン(1899~1974)

説明不要、まさにジャズ界の巨人。本名はエドワード・ケネディー・エリントン。首都ワシントンに生まれ、父親はホワイトハウスの執事であり上流の家庭環境であったため学生時代は絵画を学んでいたが、ラグタイム・ピアノに魅せられ17才で学校を中退、音楽の道に入る。26年、マネージャーで音楽出版社社長: アーヴィング・ミルズの紹介で「コットン・クラブ」のレギュラーとなり、独特のスタイルのバンドを作り上げた。生涯作曲数はなんと3,000曲以上。

代表曲:
「Sophisticated Lady」 (ソフィスティケイティッド・レディー)
天才トロンボーン奏者:ローレンス・ブラウンの協力を得て32年に作曲、33年にミチェル・パリッシュ(「スターダスト」の作詞家)アーヴィング・ミルズ(マネージャー、出版社) の2人が詞をつけている。美しいメロディの一方で、詞はかつて洗練されていたが今は身を持ち崩した女性について唄った哀しいもの。
「Sophisticated Lady」は、「ザ・ポピュラー」(BVCJ-37277)に収録されています。