Vol.45 "名作【雨に唄えば】サントラ、プレミアムなリイシュー!"編のご紹介
なかなか明けない今年の梅雨ですが、梅雨明け前に是非お知らせしたいサントラ情報をSeasoning of Songsとして皆様にお届けします。
この7月に、MGM映画の懐かしいサントラ・アルバムがリリースされましたが、その中から、サントラの超ロング・セラーとなっている「雨に唄えば」をご紹介しましょう。
「雨に唄えば」と言えば、エルダーな方ですと、”あのジーン・ケリーが土砂降りの雨の中で歌って踊るアレね・・・”と、いまさらここでご紹介することも無いほど、皆様もよくご存知だと思いますが、うれしいことに今回アルバムのライナー・ノートに脚本家のベティー・カムデンの制作裏話が載っているのです!
ベティー・カムデンは、ニューヨーク・ブルックリン生まれ。
2002年に死去したアドルフ・グリーンとのコンビ“カムデン&グリーン”として数々の名作を残し、ミュージカル映画の傑作「雨に唄えば」(1952年)の脚本を手掛けたほか、コンビとしてのブロードウェー・デビュー作「オン・ザ・タウン」(44年)が、後に映画「踊る大紐育」(’48年)として大ヒット、等など、かの時代を代表するミュージカル作家です。
そのカムデンのペンによるライナー・ノート、もちろんCDを入手すると全貌がわかるのですが、ここでその裏話の一部をご紹介しましょう。
1:タイトルも曲も、はじめから決まっていた…
カムデン&グリーンといえば、当時ブロードウェイでは超売れっ子脚本&作詞家。
いずれも当時の大作曲家であった★アービング・バーリン/★コール・ポーター/★ロジャース&ハマースタイン以外が作曲を担当する場合、脚本を引き受ける条件として、彼等自身がそのミュージカルで歌われる楽曲の作詞をすることを彼等のマネージャーが主張していた、と、言われています。
それほど、自分達の脚本を大事に想い、そしてその出来に自信があったということでしょう。
そんな彼等がニューヨークからハリウッドに呼び出され、プロデューサーのアーサー・フリードに出された依頼は、「アーサー・フリードとナシオ・ハーブ・ブラウンが20年以上も前に作った曲を使ったミュージカル映画のオリジナル・ストーリーとスクリーンプレイを書くこと、タイトルは”Singin’ In The Rain”に決まっている」というもの…タイトル決めから作曲家選びまで一任されることの多かった売れっ子の彼らにとっては、屈辱的な仕事内容(もちろん作詞さえ出来ません)だったため、降板覚悟で2週間にわたり猛抗議をしたそうです。
2:西部劇になったかも…
当初、主役は監督のジーン・ケリーではなく、オスカー・ハマーシュタインJRに認められショウ・ビジネスに入ったハンサムなハワード・キールになると言われていました。
ハワードと言えば、’50年に映画「アニーよ銃を取れ」で大成功、すでにハリウッドを代表するミュージカル・スターでした。カムデン&グリーンもハワードを想定して、”売れない西部劇俳優がトーキーの到来と共に「歌うカウボーイ」としてスターになる”という内容の脚本を書いたのですが、劇中で15~20曲もの曲をこなせる役柄として、”ある大道芸人がトーキーを通して返り咲く・・・”と言う設定に変え(もちろんこの設定もあとで変更になったのですが)カウボーイでなく唄って踊れるジーン・ケリーのアイデアが浮上したそうです。カウボーイが雨の牧場で“Singin”In The Rain”を歌ってもさまになりませんね。
他にも、当事者ならではの面白い話や、これまでサントラ等に未収録だった楽曲、またアーサー・フリード自身が歌った”Singin’ In The Rain”という非常に貴重な録音も聞くことができます。映画好きな方は是非一度チェックしてみてください。