Vol.50 キャリア半世紀超!いまだ現役バリバリ!アイズレー・ブラザーズ

今回ご紹介するアーティスト・楽曲は、キャリア半世紀超(56年!)、今なおシーン第一線で活躍するアイズレー・ブラザーズ

ストーンズ以上の、そして前回ご紹介いたしましたチャック・ベリーさえも凌ぐ長さを誇るそのキャリアに於いて、グループの編成は4→3→6→3(人)と変遷、また、時代時代に応じてドゥー・ワップ~ソウル/R&B~ファンク~コンテンポラリー~ヒップホップ・ソウルとそのスタイルもマイナー・チェンジ、アップデイトを続けるものの、結成から現在に至るまでアイズレーズがアイズレーズとして存在し続けるその所以は、そこにロナルド(アイズレー)のヴォーカルがあるから。

動:ファンク・チューンから静:バラードまで、見事に歌いこなすロナルドのヴォーカル・パフォーマンスは、数多のフォロワーが現れ消えても、オリジネーターのその輝きに一片の翳りも見えず、今現在もバリバリの現役!

そんなロナルドのヴォーカルが、実弟:アーニーのギターが冴えまくった、アイズレー:ファンク期=T-Neck時代(’69-’84年)に発表されたアルバムがこのたび紙ジャケット化(第1弾:11/10、第2弾:11/24、第3弾:12/22)!

キング牧師/マルコムXからオバマ大統領まで…公民権運動から初の黒人大統領誕生まで、アフリカン・アメリカン激動の50年をトップ・アーティストとして生き抜いたアイズレーズ…今回のThe Seasoning of Songsは、アイズレー・ブラザーズ、彼らのキャリア初期からMotown時代に至るオールド・アイズレーズ(オークリー、ルドルフ、そしてロナルド)が中心となったドゥーワップ/R&B期から、ヤング・アイズレーズ(アーニー、マーヴィン、クリス・ジャスパー)が要となったサウンド・プロダクションでヒット曲/ヒット・アルバムを連発した黄金のT-Neck=ファンク期にリリースされた楽曲/アルバムを中心に、ご紹介・お届けいたします。

 

ツイスト&シャウト~Twist & Shout~(1962年)

キャリア初ヒットとなった「Shout」(‘59年)、クラプトン在席時のヤードバーズにもカヴァーされたオリジナル楽曲:「Respectable」(‘60年)をリリースしたRCA(アイズレーズが最初に所属したレーベル)から、アイズレーズは’62年セプター・レコード傘下のワンド・レコードに移籍、この「ツイスト&シャウト」の大ヒット(全米17位)で華々しく再スタートを切ります。
「ツイスト&シャウト」、改めて言及するまでもなくビートルズ版がつとに有名ですが(‘64年に全米2位を記録)、“オリジナル”とされるアイズレー版も実はカヴァー。オリジナルは’61年にトップノーツというグループがレコーディングしています。そして、そのトップノーツ版「ツイスト&シャウト」をプロデュースしたのは、フィル・スペクター!
また、ビートルズの他、ママス&パパス、そしてザ・フーなどがこの曲をカヴァーしています。
この時のメンバーは、オークリー、ルドルフ、そしてロナルドの3兄弟。
 

ディス・オールド・ハート・オブ・マイン~This Old Heart of Mine(is weak for you)~(1966年)

ワンド→UAとレーベル移籍を重ねるアイズレーズ、’66年にはベリー・ゴディの目にとまりタムラ/モータウンと契約、モータウン初ヒットとなったのがこの曲(‘66年全米12位)。
ジャクソン5、シュプリームス、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダーらを擁し、まさにこの世の春を謳歌していた当時のモータウン、そのヒットナンバーの多くを手掛けた作家チーム:ホーランド=ドジャー=ホーランドの手によるこの曲は、当初シュプリームスの楽曲として制作されましたが、一転、アイズレーズに提供され大ヒット、シュプリームス版は後にアルバムに収録されました。
‘89年にはロッド・スチュワートがロナルドとのデュエットでこの曲をカヴァー、全米10位の大ヒットを記録しました。
尚、UAを離れたアイズレーズは、モータウンとの契約前、一時的に自主レーベルを起ち上げています。そのレーベル名こそ、T-Neck。
そして、そのT-Neckからリリースされた第一弾シングル“Testify”(‘64年)でギターをプレイしたのが、あのジミ・ヘンドリックス!
ジミは”Testify”の他1曲をアイズレーズとレコーディング、その後リトル・リチャードのツアー・バンドを経て、一躍ギタリストの頂点、そして稀代のロック・アイコンに昇りつめます。

イッツ・ユア・シング~It’s Your Thing~(1969年)

モータウンを飛び出し、ブッダ・レコード傘下で自身のレーベル:T-Neckを再スタートさせたアイズレーズ、’69年夏にリリースしたこの曲は全米2 位、R&Bチャート1位を獲得するミリオン・ヒットになるとともに、アイズレー・ブラザーズに最初のグラミー賞をもたらしました。
ジェイムス・ブラウンによって産声をあげ、スライ(ストーン)の出現で’60年代末の音楽シーンに一気に広がったファンク・ムーヴメント、その流れのさなかリリースされたこの曲でベースを弾いているのは、これまた兄弟のアーニー(アイズレー)。
‘72年、「ポップ・ザット・サング」、「イッツ・トゥー・レイト」(キャロル・キングのカヴァー)、アヴェレージ・ホワイト・バンドなどにカヴァーされた初期アイズレーズでも屈指の名曲「ワーク・トゥ・ドゥー」、などを収録したアルバム“ブラザー、ブラザー、ブラザー”をリリース、レコーディングには上記3兄弟の弟2人:アーニー(ギター)、マーヴィン(ベース)、そして義兄弟(ルドルフの奥さんの弟)にあたるクリス・ジャスパー(キーボード、NYジュリアード音楽院出身!)が参加、アルバム・リリース後正式にメンバーとして加入し、アイズレー・ブラザーズはそれまでのドゥーワップ/コーラス・グループから一転、セルフ・コンテッド・バンド(グループ)に生まれ変わりました。
そして、この若い3人が、その後のアイズレー・サウンドの要となります。 

ザット・レディー, Pt 1&2~That Lady Pt.1&2~(1973年)

‘73年、T-Neckのディストリビューションをブッダからエピック・レコードに移したアイズレーズは、オリジナル・メンバー3名にアーニーをはじめとする新メンバー3名が正式加入後初となるとアルバム、その名も「3 + 3」をリリースします。

ソウル/R&Bに加え、当たり前のようにジミヘンやツェッペリンなどのロックを聴いて育った若い世代:アーニーらの加入で、サウンドはファンク+ ロック色が強められ、そこにロナルドのヴォーカルが絡む新生アイズレーズ・サウンド・プロダクションはコマーシャル/クオリティ両面で大成功、「3 + 3」はアイズレー・ブラザーズにとって初のプラチナ・アルバムとなり、最高傑作と賞されました。

その「3 + 3」トップに収録された「ザット・レディー」、もともとは’64年にリリースされた「Who’s That Lady?」のセルフ・カヴァーで、アルバム収録ヴァージョンは5分尺のうち後半3分超(Pt.2に該当)がアーニーのギター・ソロがフィーチャーされた新メンバーの独壇場的セッション・パート(ヴォーカルなし)、アイズレー新時代を告げるこのシンボリックな楽曲はマーケットにも受け入れられ、全米トップ 6ヒットとなりました。

「3 + 3」には、シングル・カットされたオリジナル楽曲「イフ・ユー・ワー・ゼア」(ワム!もカヴァー)や「ホワット・イット・カムズ・ダウン・トゥ」などとともに、ジェイムス・テイラー「寂しい夜~Don’t Let Me Be Lonely Tonight」やドゥービー・ブラザーズ「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」(”ブラザーズ”くくりでライバルと称されたことも…)、ジョナサン・エドワーズ「サンシャイン」、そして、シールズ&クロフツ「サマー・ブリーズ」など、当時のウエスト・コースト・チューンのいずれも秀逸なカヴァーが収録されています。

ちなみにアイズレーズが「3 + 3」をレコーディングしていたスタジオでは、同時期、スティーヴィー・ワンダーが「インナービジョンズ」をレコーディングしていました。
’70年代を代表する名盤が同じ時期それも同じ時間に同じスタジオでレコーディングされていたという偶然も興味深いですね。
尚、スティーヴィーとアイズレー、エンジニアが同じ、そして、スティーヴィーとクリス・ジャスパーはこの時期同じシンセ(ARP 2600)を使っています。。

ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド~Harvest For The World~(1976年)

「3 + 3」に続き、名盤「Live It UP」(‘74年)、初のチャートNo.1「The Heat Is On」(‘75年)とハイ・セールス/ハイ・クオリティ・アルバムをリリースし、「ミッドナイト・スカイ」「ファイト・ザ・パワー」「フォー・ザ・ラヴ・オブ・ユー」などのヒットも連発、ファンク黄金期の中心を往くアイズレーズ。

‘76年にリリースしたアルバム「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」も大ヒット、その冒頭を飾るドラマティックなプレリュードを継ぐかたちで収録されたこのタイトル・トラックは、アイズレーズ得意のフォーキッシュなファンク・ロック・チューン。

尚、この「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」には、(故)アーリアがカヴァーしシングル・カット(’94年全米6位)した至極のシルキー・バラード:「(アット・ユア・ベスト)ユー・アー・ラヴ」も収録されています。 

シルクの似合う夜~Between The Seats~(1983年)

「ハーヴェスト~」以後も、「明日への銃撃」(‘77年)、「ショウダウン」(‘78年)、「ウイナー・テイクス・オール」(‘79年)とヒット・アルバム/ヒット・ソングをコンスタントに生み出したアイズレーズですが、’70年代初頭から隆盛を誇ってきた多くのファンク・バンドがそうであったように、’70年代末、映画「サタデーナイト・フィーバー」によってもたらされたディスコ・ブームや、’80年代初頭に勃興したパンク・ファンク・ムーブメント(リック・ジェイムスや初期プリンスの音はこうカテゴライズされていました)などに呑み込まれ、セールスは低迷します。

それでもアイズレーズは、かつてドゥーワップ・グループからファンク・バンドに変貌を遂げたときのように、シーンの流れに順応し、ふたたびその音楽スタイルのシフト・チェンジを図ります。

マーヴィン・ゲイの復活作にして遺作となった最後のシングル・ヒット「セクシュアル・ヒーリング」からのインスピレーションが明白な、シンセサイザー/ドラム・プログラミングによるエレクトロ・ファンク・サウンドとソウルフルなメロディーを融合した、従来の骨太ファンク・サウンドとは趣を異にした洗練されたスムーズ・ヴァイヴを構築します。

そんなサウンドに乗せてロナルドの文字通りシルキーなヴォーカルが堪能できるこの「シルクの似合う夜」、原題:Between The Sheetsの文字通り、シーツの中での出来事をあからさまに歌った楽曲で、サウンド面のみならずリリック面でも「セクシュアル・ヒーリング」の影響が色濃くみられます。ちなみに、この時期からアイズレーズの音楽は“ベイビー・メイキン・ミュージック”と呼ばれ始め、“(ラジオで)アイズレーズがかかると出生率が上がる” なんていう都市伝説も囁かれるようになりました。

リニューアルされたアイズレーズ・サウンドはセールス/クオリティ両面で大成功、特にR&Bチャートではこの曲が久々の大ヒット、トップ3入りを果たします、が、このアルバムのリリース、引き続いて行われたツアーを最後に、T-Neck時代(=”3 + 3”時代)のサウンド面を支えた若い3人(アーニー・アイズレー、マーヴィン・アイズレー、クリス・ジャスパー)がグループを脱退し、アイズレーズ黄金の T-Neck時代は終焉を迎えます。

グループ分裂後、上3人はアイズレー・ブラザーズとして引き続きキャリアを続行、が、長兄:ルドルフの急死、オークリーの引退等、’80年代中~後期は困難を体験します。
一方、下3人は、アイズレー=ジャスパー=アイズレーとして活動をスタート、’85年にリリースした2ndアルバム’“キャラバン・オブ・ラヴ”のタイトル・トラックが大ヒット、全米No.1を獲得しますが、’88年に解散、アーニーとクリスは各々ソロ・アーティストとしての道を歩みます。

‘90年代に入り、音楽シーンがヒップホップ全盛となると、アイズレーズを取り巻く状況も一変、彼らの楽曲が頻繁にサンプリングされ再び世間的認知度を高めていきます。

数多のアイズレー・チューン・サンプリング楽曲のなかで代表的なところといえば、現在では俳優としても有名、ドクター・ドレも在籍したN.W.A.のメンバーでもあったアイス・キューブが全米ブレイクを果たした曲、「フットステップ・イン・ザ・ダーク」('77 年リリースAL「GO FOR YOUR GUNS」収録)をサンプリングした「イット・ウォズ・ア・グッド・デイ」('93年にR&Bチャート7位を記録)、また、鳴り物入りでデビューし即ブレイク、実働わずが5年若干24歳で嵐のようなその生涯を閉じた伝説的ラッパー:ザ・ノトーリアス・B.I.G.が同じく全米ブレイクを果たした曲、「シルクの似合う夜」のシンセ・パートを大胆にサンプリングした「ビッグ・ポッパ」('95年全米6位の大ヒットをマーク)、など。

このように高まるアイズレー再評価の機運に後押しされ、’92年には、ロナルド、アーニー、マーヴィンの3人で“アイズレー・ブラザーズフィーチャリング・ロナルド・アイズレー”として再結成、’93年には憧れのリトル・リチャードにイントロデュースされる形でロックの殿堂入りを果たします。
‘96年にはアルバム「ミッション・トゥ・プリーズ」をリリース、「シルクの~」以来のヒットとなります。

また、アイズレーズを聴いて育ったヒップホップ全盛時代のプロデューサー達(アーティストも兼ねる)、RケリーやP・ディディーなどからも熱く共演を乞われるようになり、特にRケリーにフィーチャーされた「ダウン・ロー」は全米トップ4の大ヒット、ロナルドがマフィアのドン(?) を演じたPVも話題となり、以後、ロナルドはその役名:ミスター・ビッグスと名乗ること頻繁となります。

以後、2000年代に入っても、アイズレーズで育った世代のミュージシャン/プロデューサー達からの熱烈なバックアップを受けながらグループは精力的に活動、サンプリングによってアイズレーズを知った新たなファンを取り込むかたちで、’03年にリリースした「ボディ・キッス」を’75年の「The Heat Is On」以来、じつに28年ぶりとなる全米No.1アルバムとします。
異色どころでは、「雨にぬれても」「遥かなる影」などの名曲を(バート)バカラック自身がリアレンジ/オーケストレーションし、類まれなるシルキー・ヴォーカリスト:ロナルドが歌った奇跡のコラボ企画盤:アイズレー・ミーツ・バカラック「ヒア・アイ・アム」(UICW-1046)をリリース、など…

活動半世紀を越え、いまだ現役バリバリのアイズレー・ブラザーズ。
時代時代に応じてサウンド・スタイルを変化させ、新たなファンを獲得し続けるアイズレー・ブラザーズ。
ロナルドが健在でいる限り、彼らのキャリアは続くことでしょう。 

リリース情報

「ツイスト&シャウト」「ディス・オールド・ハート・オブ・マイン」など、アイズレー黎明期の名曲はベスト盤で!

● The Essential ISLEY BROTHERS/エッセンシャル・アイズレー・ブラザーズ:MHCP-449~MHCP-450/\3,780(税込)

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黄金のT-Neckエラが紙ジャケで甦る! 


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The Brothers: ISLEY/ザ・ブラザーズ:アイズレー【完全生産限定盤】
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Givin' It Back/ギヴィン・イット・バック【完全生産限定盤】SICP-2863/¥1,995(税込)

 




Brother, Brother, Brother/
ブラザー・ブラザー・ブラザー【完全生産限定盤】SICP-2864/¥1,995(税込)  




3+3/3+3【完全生産限定盤】SICP-2865/¥1,995(税込)

 




Live It Up/リヴ・イット・アップ【完全生産限定盤】
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The Heat Is On/ヒート・イズ・オン【完全生産限定盤】
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Harvest For The World/ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド【完全生産限定盤】
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また、ロナルド・アイズレー新作「Mr.I」もリリースされました(輸入盤)!
‘06年脱税容疑で逮捕され、今年4月に晴れて出所、その後制作された今作ではキャロル・キングの“You’ve Got A Friend”をアレサ・フランクリンとデュエット!T.I.ら豪華ゲストも参加した最新作も併せてお聞き下さい!